「うちの子は、私のことが一番好きなんです。」
飼い主さんと話していると、そんな言葉を聞くことがあります。
もちろん、それはとても素敵なことです。
でも私は、毎月たくさんの犬と接していて、少し違うことを感じています。
犬は、「誰が一番好きか」を競っているわけではないのかもしれません。
私が大切だと思うのは、
「この人といると安心できる。」
そんな存在がいることです。
トリミングで見えてくる4つのタイプ
トリマーをしていると、犬たちの反応は本当にさまざまです。
① 飼い主さんが帰った瞬間に大はしゃぎする子
飼い主さんが見えなくなると、
「遊んでー!」
「自由だー!」
というように、急にテンションが上がる子がいます。
もちろん、飼い主さんが嫌いなわけではありません。
でも私は、「気を使わなくていい時間になったのかな」と感じることがあります。
飼い主さんの愛情が深いからこそ、お互いに少し力が入りすぎていることもあるのかもしれません。
② 飼い主さんが大好き。でも私にも普通に接してくれる子
私は、このタイプがとても好きです。
飼い主さんを見つけると嬉しそう。
でもトリミング中も落ち着いて過ごせる。
私にも普通に体を預けてくれる。
「トリミングはトリミング。」
「家は家。」
そんなふうに切り替えられる子は、気持ちの波が少なく、とても安定しているように感じます。
③ とにかく遊ぶことが大好きな子
「遊ぼう!」
「ねぇ遊ぼう!」
そんな子は、私にもよく懐いてくれます。
人が好きで、遊ぶことが大好き。
見ているだけでこちらも笑顔になります。
ただ、このタイプは元気だからこそ、遊び足りない日が続くとストレスを抱えやすい印象があります。
元気いっぱいなのは素敵なこと。
だからこそ、その元気を発散できる毎日が似合う子たちです。
④ 飼い主さんがいないと震えてしまう子
中には、飼い主さんが見えなくなった瞬間から震え始める子もいます。
誰が抱っこしても落ち着かない。
周りを見る余裕もない。
そんな姿を見ると、私は「好き」というより、「不安」が大きくなっている状態なのかなと感じます。
飼い主さんへの愛情が深いことと、安心して一人で過ごせることは、少し違うのかもしれません。
「好き」と「安心」は、少し違う
私は、犬にはたくさんの人を好きになってほしいと思っています。
家族。
友達。
トリマー。
動物病院の先生。
「この人も好き。」
そんな人が増えることは、犬の世界を広げてくれます。
でも、「安心できる人」は少し特別です。
何もしていなくても、その人のそばで眠れる。
背中を預けられる。
静かに寄り添える。
そんな相手は、犬にとって大きな安心なのだと思います。
愛犬が教えてくれたこと
以前、一緒に暮らしていたプードルは、とても人が好きな子でした。
家族の後ろをついて歩いたり、
子どもが昼寝をしていると、隣で一緒に眠ったり。
親戚が遊びに来れば、膝の上に乗っていました。
基本的に誰かの背中にもたれかかっていて、寝ていることもありました。
あの子は、誰か一人だけを特別に好きだったわけではありません。
きっと、「この人たちは安心できる。」と思ってくれていたのだと思います。
その姿を見ていると、犬にとって幸せなのは、「一番好きな人が一人いること」ではなく、「安心できる人がたくさんいること」なのかもしれないと感じます。
犬は、人の空気を感じています
犬は言葉を理解する前に、人の雰囲気を感じ取ります。
優しい声。
穏やかな表情。
ゆったりとした空気。
そんな人のそばでは、犬も自然と力が抜けていきます。
反対に、いつも緊張していたり、「こうしなきゃ」「こうあるべき」と力が入りすぎている空気は、犬にも伝わることがあります。
私は、犬が安心する人というのは、特別な技術を持っている人ではないと思っています。
犬の気持ちを急かさず、一緒に穏やかな時間を過ごせる人。
そんな人のそばで、犬は安心して眠れるのではないでしょうか。
一番にならなくてもいい
「私が一番じゃないと。」
そう思ってしまうこともあるかもしれません。
でもたくさんの人を好きになっていい。
安心できる場所がいくつもあっていい。
その方が、犬にとっては心強い毎日なのではないかと、私は思います。
犬は話せません。
でも、寄り添う相手や、安心して眠る姿を見ていると、「この人といると落ち着くよ。」という小さなメッセージが伝わってくる気がします。
私はこれからも、そのメッセージを大切に受け取りながら、一頭一頭と向き合っていきたいと思っています。